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#0281




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ひとりで気ままに向かった、北海道、小樽への旅。

あざれあ号の船尾デッキで、彼と出会った。

6歳くらい年上で、彼についての話を聞けば聞くほど、君は、とんでもない人と
一緒の船にのってしまったものだ、と思うはず。
君は、そこから逃げ出してはいけなかった。今の僕が、あるために。

残った事実があるとすれば、彼に出会わなければ、今この場で文章なんて書いて
いなかったし、やりたいことなんか選べずに、暮らしていたに違いない。

彼には見えていた。会ったばかりの25歳が、この先どうにもなっていかないこ
とを。だから、ほとんどの者が見えていないだろうやり方を、実際、君に丁寧に
示し、知らなかったことほど、たくさん教えてくれた。

写真の撮り方や文章の書き方?、どうでもいい。これから先、いい写真を撮って
いい文章を書くために必要な具体的な生き方ってやつを、あの時の君にでもわか
るように教えてもらえたんだ。

小樽行きの船の上で、文章を書いて、作家になるって彼に言っていた。彼はこう
言ったよ、お前はまだ、そのなり方を知らないだけなんだって。
僕の文章は、その先も彼から色々な事を学ぶことによって、次第に何かが変わっ
ていった。写真についても、ひょっとしたらそうなのかもしれない。

現在の僕は、その時の彼より年上となっている。だから少しくらいわかることも
でてきた。今の僕がどんな状況でも生きているのは、彼にそのやり方をしっかり
とした事実をもとに、教わったからなんだ。

僕はきっと、ここに彼の写真を載せないだろうし、彼とのこれからの物語だけは、
正直、書きたい事もほとんど書けずに、進んでいくだろう。

これからここでは、彼のことを、彼、と書く。



#0281-02-08 /  Necessary encounter

at 07:40, yusukesato, 02

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