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#0229

 




日も沈んでくると、彼女はこの旅で初めて僕に不安を明かした。

寒くなってきたし、街頭もなかったし、前に続く道も人のために敷かれたものと
は思えなかった。ここまでおそらく10キロ近くは歩いていて、この状態であと
何時間も歩くことは厳しそうだった。
たぶん終電を逃すことよりも事態は深刻だ、とのんきに考えてはいけない。ここ
は絵にもできないような、荒野だったから。

正式に付き合い始めてまだ1日目の女の子を、こんな状況にもさせてしまう。正
直やってしまったと僕は思った。地図を見ていけるかなと思ったけど、今となっ
てはここが釧路湿原の一部であることしか分からない。

暗く広がっていく空に飲み込まれそうになり、歩くのも怖くなって、途方に暮れ
る。釧路の街に戻るには、車が走るような大通りに出ることだ。しかし暗くなっ
てよく分かったのは、その前方には明かりが灯っていなかったことだ。1時間ほ
ど前に大きな工事用ダンプカーがこの砂利道を一度通ったけど、もうその気配す
らない。

24歳、こんな僕に付き合ってくれた白い恋人を守ってやれ。僕は自分に少なか
らず男らしいテーマを与え、不安をなんとか隠そうとしたけれど、ここではそん
なテーマが役に立つはずもなかった。

あとは祈るか、信じるだけか。手をつなぎ15分くらいさらに前方に歩くと、友
子が目の前から小さな光を見つけ出し僕の手を離した。それがこちらに近づく瞬
間に、もうちょっとだけ、ドキドキハラハラしてみたかったと少しでも思った僕
は、やっぱりマヌケに違いない。
白い恋人が呼び寄せただろう、素敵な軽トラックだった。



#0221-01-08 /  Kushiro Marshland 2

at 13:30, yusukesato, 01

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