#0005

 



1999.12.22


うまれてはじめて、自分のカメラを選んだ日。

おまけとして、生涯の友達までついてきた。


同じ学年になった、セブンスターとは、まったく気が合わなかったが、

そんなのは、どうでもよかった。


留年もしちゃって、ひとりぼっちだった僕に、

カエルの王子様が、記念にフィルムをプレゼントしてくれた。



#0005-99-12 /  Unhappy Birthday

at 13:46, yusukesato, 99

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#0007

 




カメラを買った翌日早朝、僕はさっそく近所を歩く。

撮りたいものがあるわけではなかった。

このまま待っているだけでは気が狂いそうな状況を、

どこかにぶつけるための衝動でしかないのだから。


セブンスターから教わった、理解できないカメラの絞り、フィルムの感度。

僕の住む国分寺、東元町3丁目、誰も歩いてないような冬の朝。

彼女はロサンゼルスへ着いただろうか。

これからの生き方を与えてくれた、そう思うしかなかった。

それでも、君は君の人生をつかむ為に、そうするしかなかったんだ。



#0007-99-12 /  Starting on a long long trip

at 00:53, yusukesato, 99

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#0008

 




夜に街を歩いて写真を撮ることも、今まではなかった。

そして遠くにいる人のことを想うのも、初めてのことだった。


海外にもいったことがない、狭い世界の住人だった。

新潟で生まれた、神奈川で育った、東京で一人暮らしをしている。

親からの仕送り、アルバイト、ただの大学生であることが嫌なくせに、

どこにも踏み出せずに、ここにいる。


ロサンゼルスのクリスマスって、どんなだろうか。

考えたくもなければ、想像すらできない。

帰りに彼女が好きだと言っていた、Leaving Las Vegas をレンタルして見た。

余計に、気が狂いそうになった。



#0008-99-12 /  Silent Night

at 11:51, yusukesato, 99

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#0011






クリスマスの街、たくさんのシクラメンとポインセチアが並んだ。

店長と一緒にその日の片付け、花を台車にのせていく。

よかったね、花屋のバイトを決めた時、安心してくれた人がいた。

クラスメイトが新米花屋さんの様子を伺いに、トイレットペーパーを買いにくる。

今、花屋さんが一番必要としているものは、誰かの笑顔なのかもしれない。



#0011-99-12 /  OK Mirei

at 00:51, yusukesato, 99

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#0012

 





花屋さんのバイトの後は、いつもの深夜バイト。

パートのおばさんと一緒に、あらゆる異物を片付ける。

クリスマスの後は、シクラメンの売れ残りよりも、はるかに深刻な問題が残った。

今夜もクラスメイトが来ないよう、神様に祈りを捧げる聖なる夜。

さえない清掃員が必要としていることは、誰かのあえぎ声なのかもしれない。



#0012-99-12 /  Hotel Edelweiss 101

at 03:33, yusukesato, 99

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#0014

 




君のはじまりに、いあわせたこと。

しあわせであった場面も、なかった場面も、忘れないように生きてきた。

君たちの夢を、みれたこと。

その時は、ひとりではなかったということを、忘れないように生きてきた。

いくつ羊をかぞえても、あの時の君は、どうか君のまま。

僕のはじまりに、いあわせてくれたこと。



#0014-99-12 /  Counting Sheep

at 04:51, yusukesato, 99

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#0015

 




張りつめた空気のはじまる冬、写真を選んだ。

いつもの静かな部屋、いつもの音楽も聞こえないと、

シャッターの音だけが響いた。


カメラの説明書には、サイレントシャッター搭載と書いてあった。

それでもそれは、僕の耳にとても大きく聞こえた。


写真が好きでカメラが好きで、このシャッターを押しているわけではない。

とてもバカだから、世の中のことなどまるで分からなかったけど、

それだけは、ちゃんと理解できていた。



#0015-99-12 /  Silent Room

at 16:05, yusukesato, 99

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#0017

 



1999.12.22


1997年に大学に入ってから、その6年間(1留1仮卒業している)を毎日
日記帳に書いてきたんだけど、1999年のものだけ、どういうわけか存在し
ていない。

そして、僕がこれから先あと何十年か生きたとして、自分にとって最も尊かっ
た1年間を選ぶならば、僕はたぶん、1999年だと言うだろう。

決して楽しく過ごしていたわけではなかった。年間を通した笑顔の回数なんて
たぶん指で数えられてしまうほどだろうな。写真というものを選んだのも年末
だったから、撮ったのもわずか10日間に過ぎない。
その時の僕を支えていたのは、今となっては取り戻すことのできない、ある得
体の知れない力だった。

大学の課題ではあったけど、初めて小説「花林糖」を書いた。新しく買った、
エーデルワイスと名付けたリトルカブで、何歩も先を行くだろう者を追いかけ
ようとした。授業中、みんなで教室から見える芝生でビールを飲んだりするこ
とも、今までの僕であったなら、どうしてもできなかったことだった。

ラブホテルのバイトだけでは何かが足りなくて、花屋のバイトも始めた。セブ
ンスターに使い捨てカメラで撮っていた、恥ずかしい写真を見せた、そしてそ
こから、僕にとっての本当のはじまりが起こったと言えること。

これからのあまりにくだらなくて、素晴らしい日々があるためには、僕にもで
きるかもしれないを、実行することが何より必要だったんだ。

けどあと何十年と生きたって、最も尊いだろう時代がこの先ないといえるのも
たいへん困ったことだよね。こういう精神を変えない限り、僕は人並みな幸せ
を手にすることって、たぶんできないのかもしれない。

それが、現在の僕が思う、不幸せな誕生年ってことなんだ。



#0017-99-12 /  HEXAR

at 13:43, yusukesato, 99

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#0522

 




11年前のその日、写真をはじめた。

12月22日は、僕が写真をはじめた日なんだ。

新しい自分の人生をはじめた頃の出来事。花屋のバイトをはじめたり、孤立して
いた僕にも本当の友達ができたりした。
誰にも自分がうまれた誕生日ってものはあるけれど、20代の頃の僕は自分の誕
生日はどちらかというと、この日の方に設定していたな。

11年経った今、ここにそのことをこの瞬間に書いてはいるけれど、そこまでこ
の日に思い入れを抱いているわけではない。けど忘れない事実だけはしっかりと
残っている。

写真が好きで、この道を選んだわけではない。他にまったくやりたいことや、で
きそうなことがなかったから、夢をあきらめたような状態で写真を撮ることを選
んでもいる。
写真という世界の中で、ひょっとして無理をして、夢らしいものを抱こうとして
きたけれど、最近の僕はそのことに関して、まったくピンときていない。少し前
の僕だったらそれで、困ったな、弱ったな、と思ってきたけれど、今の僕はそれ
すら思っていない。

写真をとりまく状況は、あの時と今ではまったく違うと思っている。
時代がそこを選んでしまってきたことに対して、僕には数年前から感じてきたこ
とがある。僕が自己を表現する上で、それをすべてとすることに関して、疑問を
持ってきたことがある。

写真しかなかった頃の僕はある意味とても尊かった。しかしやがて、本当に伝え
たい想いを写真というものだけに僕が懸命に込めることが、まわりにある環境に
はどうやらそぐわないことを思い知らされると、むなしさだけが残った。
11年間、僕は戦ってきたように思ってきたけど、どちらかというとそれを同時
に遠ざけてきたようにも思う。
写真は写真でしかないからね、そんなことを言ってはじめたのが、写真は写真、
今年の僕がしてきたことなんだ。

それでも僕の写真を好きと言って、応援し続けてくれる人も本当にたくさんいて
くれる。いつまでも見守ってくれる人たちの顔は、会っていなくてもいつだって
思い浮かべることができるし、今まで撮らせてもらったその人たちのことは、事
実として僕が忘れるわけはない。

これから写真に突き進むのも、あるいは進んでいかないのも、今まで出会ってき
た人たちとの関係がなければ語れない。
あったはずの自己を薄めながら、周りの環境に合わせて、写真をなにかの凝り固
まった事象として、それを仕方がないからと認めてしまう人たちの作品のような
ものに、僕はあまり感銘を受けたことはないし、それを僕がしようと思うのは、
意味がないような気もしている。世の中に対して、何もできていないような僕が
言うのもなんだけど。

いつまでも不器用で、僕が生きていく方法を考えようとしている。なんかいいん
だよなあ、と失わない心を残そうとしている。今まではひとりだと思っていた心
が違うものだと気付いたら、新しい僕にとっての写真のあり方が見えてくる。今
の僕には、本当に大切にするべきものがしっかりと見えている。

誰もが思っている、あとはやるだけだ。

その言葉は、とても危険なもろい希望なのだと思う。それを続けてきた君ならわ
かるはずだ。もう始まっていると気付かなければ、君のしてきたことは、誰にも
気付いてもらえないんだ。


#0522-99-12 /  Ray of Hope

at 00:20, yusukesato, 99

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